【雨垂れ石を穿つ①順天堂大・原裕紀選手】~東大マネージャーが見た初心者からの挑戦・後編~

こんにちは。東京大学自転車部競技班でマネージャーを務めております、3年の植田瑞貴です。

東大自転車部の練習日記を読んだ学生委員長の方山さんからのご指名で始まったこの企画。テーマは「大学から自転車競技を始めることについて」。
高校以前に競技に触れたことがなかった選手たちは、何を感じ、どうやって上を目指しているのか、その心境に迫ります。

東京大学自転車部競技班の練習日記はこちらから!
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初となる今回、インタビューに応じてくれたのは、順天堂大学・主将の3年生、原 裕紀(はら ゆうき)選手!

1年生の7月、大町美麻ロードレースでレース初出場。同年度の1月に全日本学生RCS第13戦・埼玉クリテリウム行田第3ラウンドでクラス2へ、そして3年生の4月、第18回全日本学生選手権クリテリウム大会にてクラス1に昇格しました。

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2016年度個人ロードレース大会では16位完走
原 裕紀(はら ゆうき):順天堂大学

競技開始:大学1年4月
大学以前の運動歴:サッカー(小学校1年~高校3年)+ 柔道(初段)
得意種目:ロードレース
主な戦績:2016年白馬クリテリウム1位 2016年度個人ロードレース大会16位 2016年度チームTT5位
愛称:「原ちゃん」「原坊(はらぼー)」
これまでの連載はこちらから!
【雨垂れ石を穿つ①順天堂大・原裕紀選手】-前編-

それでは原選手のインタビューの後編をお届けいたします。ぜひご覧ください!

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―うーん、せっかくの機会だし選手っぽい質問しようかな。得意な展開とかコースとかはある?

原●結構自分にあった戦い方とかは考えてるんだけど、ゴリゴリのスプリントが得意でもないし、TTスペシャリストでもなくて、最初にスピードが速い巡行中に抜け出すのはきつくて…うーん(笑)
だから、じりじり人数が減っていって、最後まで粘って勝負みたいなほうが得意かな。長距離ロードレースで、中途半端にインターバルがかかるみたいな。

(クラス1に昇格したときの)全日本クリテも横風が強すぎて15人くらいしか完走しなかったし、サバイバルでみんなが我慢してる中自分は最後まで絶対残るぞ、っていう展開が好き。
あ、だからCSC好き (笑) 短い登りで、ちょっと下って、を繰り返すコースだからねー。

―なるほど、我慢が好きなのか(笑) 走っている最中はなにを考えてるの?

原●サッカーやってた時の精神がもとになってるんだよね。一人じゃ結果を出せないチームスポーツの経験は大きい。自分が結果を出したいと思って、というよりは、同じチームの選手がいるから、チームメイトのために、って思っているかもしれない。
自分が勝つことだけを考えるっていう精神が足りないのは弱みかもしれないけど、例えばチームメイトのために役割を背負って前の逃げを追っている、みたいな場面では、俺は強いと思う。

…2016年のチームTTで、前主将の重田さんがTTメンバーに対して、「この4人に託した」って送り出してくれたんだよね。重田さんが待っているから、頑張らなきゃって思った。その経験も大きいなー。
インカレでも、一緒に頑張ってきた先輩たちのために集団を牽いた。個人競技でも、仲間の存在が心の支えなんだよね。それがロードレースかなって、3年競技やって思い始めた。

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心の支えはチームにあり(16年度アジア大学選手権にて)

―じゃあ自分自身の目標は?

原●目標は、やっぱりインカレロード優勝だな。始めたときから、ずっと。個人ロードでも結果を残したいし、四年生だから結果を残すことは使命みたいな感じだけどね。

―うんうん、やっぱりインカレは大きいよね。引退はインカレ?

原●うーん、RCSシリーズ戦も狙いたいって思ってるから、まだ決まってない(笑) 自転車以外のことを考えないわけにもいかないけど、来年は結果を残したい。海外でも走ってみたいし。

―そっか、そしたらまだまだ原ちゃんが走ってるのが見られるね!
一度聞いてみたいと思ってたんだけど、主将になって数か月経って、競技に向かう姿勢とか選手として担うものは変わってきたって感じてますか?

原●部活をまとめなきゃいけないっていうのもあるし、法政大・前主将の青野さんみたいに、主将として結果を出さなきゃいけないなと思ってて、主将任命されてすぐはプレッシャーだったねー。
朝起きて、考え込んじゃったりとかした。だけど最近はプレッシャーはあるけど割り切れてきて、順天堂大・前主将の重田さんの話を聞いたりしながら、一歩踏み出したかなと思ってる。

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16年度個人トラック大会で原選手とともにマディソンを走る重田選手(右)。前主将として目標となる存在だ

―いつか、私に「ちゃんと練習してるよ!」って言い切ったことあったじゃん?

原●あったなー、ナルシストだったわ(笑)

―えー?(笑) それってすごいことだと思うんだ、自分がやってることに対して胸を張れるというか。だから原ちゃんは自分の姿で引っ張っていく主将になるのかなあって思ってるよ。

原●主将として俺ができることっていうとなー…。口はあんまり上手くなくて、言いすぎてうまく伝えられなくて上から目線みたいになっちゃうから(笑)、自分の中で淡々と練習していって、その姿で部を引っ張っていく、みたいなのが自分の理想の主将像かな。
本当に勝ちたいなら自分で考えて行動しないと強くはなれないから、後輩とかにアドバイスはするけど、まずは自分が練習して結果を出して引っ張っていく、みたいなところを目指してる。

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自転車競技を初めて1年弱、14年度RCS#13行田第三ラウンドでクラス2に昇格

―それでは最後に、大学から競技を始めようと考えている人に向けて、目標の立て方とか頑張り方みたいなことについて、メッセージをもらってもいいですか?

原●自転車を始めるとき、親を説得するのが大変だったんだ。でも、東京オリンピックが決まって、衝撃で、出たい!って思って…。『弱虫ペダル』で自転車競技を知って、これをやって新城選手みたいに強くなったらオリンピックに出たいんだ、って説得して、納得してもらったんだよね。

宣言しちゃったからには後に退けないみたいな支えはあったんだけど、それでも目標が遠く感じちゃうときもあったかな。そういうときは距離目標を決めて、ノートに今日何キロ乗った、っていう記録を残して、目標に対して残り何キロだ、みたいな感じでやってた。ちょっとずつ近づいている感じがあって良かったよ。

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いつも見ていてくれる仲間がいるから、いつも頑張ることができる

最初は気持ちがきつかったりしたら休むことも大事で、無理して踏ん張って心が折れるよりは、ちょっとずつ積み上げていくことが大事だと思うんだ。今日10やったけどそのあと0になっちゃうよりは、十日間1ずつ続けていくほうがいいから。
さぼっちゃったこともあったけど、自転車は目標を決めやすいタイムとかワットみたいな指標があって、それに向かって練習できるから、自分に合った目標を見つけて続けていくのがいいんじゃないかな。

あと、経験を積むっていうか、距離をいっぱい走ることは大事だと思う。落車することもあるかもしれないけど、それを乗り越えなきゃいけないし。下りとかは危ないから最初は無理しないでちょっとずつ、そのうえで経験を積んでいけば、楽しさも増えていくんじゃないかな。

―おお…。ありがとう、いいインタビューになりました…!
また試合会場ではよろしくね!

原●うん、よろしくー!

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学連80周年記念祝賀会にて。秋山選手(東京大学・中央)と筆者(右)。

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いつも試合会場で、いろんな選手と明るく話している原選手。

チームの選手のために走る、と言ったときの言葉にこめられた思いが印象的で、だからこそ彼は主将なのだろうと思わされました。今後の活躍にも期待です。

次回は慶應義塾大の福田選手。今年度、初参加のインカレで優勝という驚くべき戦績を残した彼女も、競技を始めたのは今年度に入ってからでした。

その強さの秘密に迫りたいと思います。お楽しみに!