韓国の学生自転車競技事情

 

2016年11月5日(土)~6日(日)、第22回 日韓学生対校自転車競技大会をヤマダグリーンドーム前橋で開催されます!
10月に第2回アジア大学選手権(AUC)の開催国でもあった韓国の学生トラック競技選手が日本トップクラスの高校生と大学生と対戦する日韓対抗戦、今年で22回目を迎えます!

その大会の前に、韓国学生サイクル連盟の専務理事である金景範氏に韓国の学生自転車競技事情についてお伺いしてきましたので、是非、日本の学生自転車との違いを知ってもらう機会になるといいかと思います。

【”学連”があるのは日韓のみ 】
世界的なスポーツ競技において、学生のみのカテゴリーの連盟があること自体が非常にめずらしく、自転車競技においても日本と韓国にのみ学生自転車連盟が存在しています。ただし韓国では、文化や社会的な背景の違いにより、試合の運営方法や選手の強化方法が日本とは異なる部分が多くみられます。

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以下、韓国学生サイクル連盟の専務理事である金景範氏への質問

Q1 : 韓国の自転車競技人口はどのくらいですか。

A:2016年10月現在、大韓自転車連盟(以下KCF)に所属する選手数は以下の通りです。

区分 チーム数
中学校 82チーム(男215名、女61名)
高等学校 66チーム(男214名、女83名)
大学 13チーム(男36名、女6名)
一般 37チーム(男112名、女67名)

この数字は、トラック/ロード、 MTB、 BMX選手のすべてを足したものです。なお、日本学生自転車競技連盟で実施されているような、競技力に応じてのクラス分け(RCSやTRSのようなクラス分け)は行っていません。

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Q2:韓国ではどのような形で連盟を運営していますか。
A:韓国国内のすべての試合は KCFで主催、主管しており、年間にトラック 9大会、ロード 7大会を実施しています。その中で、文化体育観光部長官旗大会および韓国で開催される日韓戦のみ、韓国学生サイクル連盟が運営をしています。大会の準備は連盟の職員や理事が行っており、学連のような当番校制度はありません。学連委員に相当する学生もいません。

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運営に必要な大会役員ですが、現役の学生選手は審判資格を取ったり大会役員になることができないため、審判や大会役員はすべて社会人で構成されています。
25歳から50歳までであれば、審判資格の取得は誰でも可能で、資格講習会を受けて審判資格を仮取得した後、実習を数試合経験してから正式な審判として認定されます。審判の管理はすべて連盟で行っています。

Q3:韓国の学生選手は一般的にどの大会を目標にしていますか。
A:KCFでは中学生から連盟主催の大会を開催していていますが、中学生の選手は「全国少年体育大会(5月末:トラック)」、高校選手、大学選手、社会人選手らは「全国体育大会(10月上旬に 7日間開催:トラック/ロード)」でのメダル獲得を最も重要視しています。

Q4:韓国では自転車競技部のある大学はいくつありますか。
A:自転車競技部として組織的に運営している大学は、韓国体育大学校と京雲大学校の2校だけです(個人レベルでは他に数校存在)。日本の伝統校の多くに存在しているOB会などはありません。現役選手が主務を兼務するようなこともなく、女子マネージャーや学生のメカニック、マッサーなどもいません。
部の運営に必要な予算は、学校からの予算+学生の家族の負担+所属自治体の体育部が支援しています。

Q5:韓国の学生選手はどのような形で競技を行っていますか
A:韓国では、中学校から大韓自転車連盟に登録ができ、そこでは希望者であればだれでも選手生活を開始することができます。
中学のエリート選手の受け皿の一つとして韓国全土に14か所の体育高校(※1)が存在しており、そこで厳しい訓練を受ける選手が多いです。

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体育高校では体育の授業の割合が通常の高校に比べて多く、学業は午前のみ、午後は練習というカリキュラムが組まれています。

高校卒業後は、大学(自転車部のあるところ)や実業団/自治体チームで選手生活を続けたり、軍人になったりする選手が多いようです(※2)。競輪選手は日本の選手ほどの報酬を稼ぐことは難しいですが、安定して稼げる有望な進路となっています。

女子選手については高校を卒業した後の受け皿がないことが問題となっていましたが、最近実業団や大学でも選手生活ができるようになりました。

Q6:韓国の自転車選手はオリンピックでメダルを取ると兵役が免除されますか。
A:自転車競技に関しては、ほかの競技と同じように銅メダル以上で兵役が免除されます。オリンピック以外では、アジア大会が兵役免除の対象となっていますが、金メダルのみが兵役免除の対象です。

Q7:韓国の自転車競技界が直面している課題は何ですか。
A:20年前から登録選手は600-800人で安定して推移してはいるものの、底辺の拡大ができていないことが一番の課題と考えています。KCFでは底辺拡大の一環として、小学生に対する自転車選手育成事業を2015年度から実施しており、毎年250人程度の小学生にBMXの教育やBMX大会を開催、BMXに必要な装備を無償で支援しています。こうした支援を受けた小学生を大韓体育会にBMX初等部選手として登録され、2016年度9大会を開催した実績があります。

(※1)韓国全土に129校ある「特殊目的高等学校」の一つ。特定の分野を高校の段階から専門的に学ぶカリキュラムが組まれており、体育のほかには科学、外国語、芸術、国際、マイスター(伝統技術)のカテゴリーがある。

(※2)一部の選手は兵役中でも「国軍体育部隊(尚武)」という、自衛隊体育学校のようなところで競技を続けることができる。